難攻不落な彼に口説かれたら
社長は親戚のおじさんのように親しげな顔で言う。

「はい」

社長の目を見てそう返事をすると、社長は相好を崩した。

「ここだけの話、私は難病を患ってしまってね。来年の春には辞任するつもりだ。だから、雪乃ちゃんが仁の側にいてくれて安心だよ」

思わぬ社長の告白に一瞬言葉を失った。

信じられなくてチラリと仁に目を向ければ、彼は少し寂しそうに笑った。

……本当に病気で辞任されるんだ。

「お身体の方は大丈夫なんですか?」

「すぐに死ぬ病気ではない。じっくり病気と付き合っていくつもりだよ」

社長はニコッと微笑むと、仁から受け取った傷だらけのスマホをポケットにしまった。

きっと、転んだのは初めてではないのだろう。

スマホが傷だらけだし……。

そんなことを考えていると、秘書室から沢渡さんが出てきた。
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