難攻不落な彼に口説かれたら
沢渡さんは私の顔を見てニッコリ微笑む。

在庫処分というのは、冷蔵庫の中のものをみんなで食べてしまうことだ。

秘書室の冷蔵庫はお菓子の宝庫。

役員の差し入れや来客のお土産でいっぱい。

「わ~、ありがとうございます!」

満面の笑みを浮かべると、沢渡さんは私の腕を掴んで声を潜めた。

「雪乃ちゃんには聞きたいこといっぱいあったのよ。女子社員の憧れの的の片岡さんとのこととかね」

沢渡さんのセリフを聞いて、背中にスーッと嫌な汗が流れた。

沢渡さんにまでバレてる。

誰が喋ったの?と疑問に思っていると、犯人は社長だった。

「社長が片岡さんと雪乃ちゃんのこと、それはそれは嬉しそうに話しててね。喋るまで帰れないわよ」

沢渡さんは悪魔な笑みを浮かべる。
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