難攻不落な彼に口説かれたら
キョロキョロ辺りを見渡して、社長や専務と談笑している仁を見つけた。

少し足を引きずりながら彼に向かって真っ直ぐ歩く。

「仁!」

仁の腕を掴んで自分の身体を押し付けると、彼は面白そうに私を見た。

「何笑ってるの?足が痛いから帰りたい。抱っこして!」

駄々をこねると、仁はクスッと笑った。

「はい、喜んで」

仁がスッと私をお姫様抱っこする。

すると、どよめきが起こった。

何をみんな騒いでいるのか?

そんなことをボンヤリ思っていると、仁が楽しげに言った。

「これで、俺達のこと社内中に知れ渡ったよ」

納会で覚えているのは、その仁の言葉まで。

その後の記憶は全くない。
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