難攻不落な彼に口説かれたら
仁から浴衣を受け取ると、胸に当てた。

「どうかな?」

仁に目を向ければ、彼は優しい目で「うん。いいんじゃない」と言って頰を緩める。

「じゃあ、私はこれで決まり」

ギュッと浴衣を抱き締めると、仁は悪戯っぽく目を光らせ、私をからかった。

「でも、結局暑いって言って脱ぐよね?」

「うっ……人を露出狂みたいに言わないで。北陸は東京より寒そうだし大丈夫。ちゃんと朝まで着てるよ」

仁の突っ込みに一瞬怯むも、ムキになって言い張った。

「室温は、東京もここも変わらないと思うけど」

クスッと笑いながら仁は冷静に返す。

「だって……着てみたいんだもん」

「まあ俺も雪乃の浴衣姿見たいけど、見て楽しんだら脱がすかもね」

仁はサラッとエロいことを言って、爽やかに笑った。
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