難攻不落な彼に口説かれたら
チンとなんとも可愛い音が鳴って、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。

エレベーターの前には長い廊下があって、私達の部屋は突き当たりの部屋。

『鳳凰の間』と書かれた部屋の引き戸を仲居さんが開けて、荷物を中に入れる。

部屋はふたつあって、露天風呂付き。

仲居さんがお茶を入れてくれる間に、窓の方に行って景色を眺めた。

部屋のすぐ横は川。

川のせせらぎが聞こえて、心が安らぐ。

「ここは、昔旧財閥家の別荘だったんですよ」

仲居さんの話に「そうなんですね」って相槌を打ちながら、部屋の中を見回した。

確かに襖の絵や天井の鳳凰の彫刻は見事で、それだけで一見の価値がありそう。

仁も興味深く天井の彫刻を眺めている。

「この彫刻、今にも動き出しそうですね」

「本当」

私も仁の横で天井を見上げると、彼が悪戯っぽく笑って言った。
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