難攻不落な彼に口説かれたら
凛とした佇まいの中にもセクシーさがあって……。

「カッコ良すぎてズルイ」

意味不明の文句を言えば、仁は私を値踏みするようにじっと見て悪魔のように妖艶な笑みを浮かべた。

「浴衣ってやっぱそそられるよね。湯畑明日にしようか?」

……それって一晩中ここに閉じ込められるってこと?

私の身がもたないんですけど……。

ギョッとした顔になると、仁は私に顔を近づけてチュッとキスをした。

「冗談だよ。行こう」

フッと笑って、仁は私の手に指を絡める。

それから、エレベーターで一階に降りると、百メートル程の長い通路を通って、湯畑に向かった。

湯畑の受付で緑のタオル生地の湯浴みを受け取ると、脱衣所が男女別に分かれていて、「じゃあ、また後で」と言って仁と離れる。

「足元注意してよ」
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