難攻不落な彼に口説かれたら
仁は私の肩をポンと叩くと、男性用の脱衣所に入っていった。

私も女性用の脱衣所に入り、浴衣を脱いで湯浴みを身につける。

ガラス戸を開けていざ湯畑へ。

薄明かりの中、石段を二十段程降りていくと、湯船が八つ見えた。

「これが湯畑かあ」

濁ったお湯を想像してたけど、透明なお湯で湯船の底まではっきり見える。

他のお客さんもちらほら。

三つ目の湯船に仁がいた。

「そこ、滑りやすいから気をつけて」

仁は湯船の下を指差す。

「うん、わかった」

注意しながら湯船に入る。

湯加減はちょうどよくて、お湯もスーッと肌になじむ感じ。

「捻挫したとこ大丈夫?」

仁は私の足元に視線を落とす。

「うん。もう体重かけても痛くないし、このお湯も特に痺れないし大丈夫だよ」
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