難攻不落な彼に口説かれたら
短気で金遣いが荒く、身内には厄介者扱いされている。
「仁に振られて少しは学習したかと思ったが……。救いようのない阿呆だ」
独り言のように呟くと、桃園を見据えた。
俺も人のことをあれこれ言える立場じゃないが、この女は俺より節操がない。
どうせ俺が前の社長の甥と知って告ってきたのだろう。
俺のことなんて何も知らないくせに……。
見た目は少し可愛いかもしれないが、他にもっといい女はたくさんいる。
「あんたさあ、自分のこと可愛いと思ってるだろ?その手で落ちるのは馬鹿な男だけだ」
冷ややかな目でそう言い放つと、ポカンとした顔で放心する桃園を残し、会議室を出てひとり居室に向かう。
「あの女のせいで余計な時間食ったな」
ハーッと溜め息をつきながら腕時計に目をやれば、ドンと誰かにぶつかった。
「あっ、すみませ……‼︎」
ぶつかった相手に謝ろうと顔を上げたら、それは仁で……。
「お前が断るなんて意外だな」
その目は、興味深そうに俺を見ている。
そんな仁にイラっとした。
「見世物じゃねえぞ。それに、俺にだって好みくらいある」
仁に文句を言えば、こいつは軽く謝った。
「悪い。古賀さんがお前に用があるらしくて探してた。お前、スマホにも出なかったから」
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