難攻不落な彼に口説かれたら
「はい」
高崎さんは真剣な顔で返事をする。
その他にも個人情報の取り扱いやメールの誤送信について注意すると、経営企画室の中や資料室を案内した。
真面目そうだから仕事もそのうち慣れるかと思っていたが、俺の読みは甘かった。
高崎さんは、かなりのトラブルメーカーだったのだ。
うちの室長である古賀さんにメールを送るはずが、宛先を間違えて古賀社長に誤送信。
同じ名字だから間違えやすいが、これは絶対にやってはいけないミスだ。
CCで送られて来たそのメールを見て俺が青ざめたのは、言うまでもない。
すぐに社長に謝罪メールを送るが、【今後は注意するように】と一言だけ注意された。
社長の返信メールの宛先には室長の古賀さんのアドレスがCCで入っていたが、古賀さんから言われたのは『しっかり指導しろよ』だけ。
もっとネチネチ言われるかと思ったが、逆に簡単に済んで不気味だった。
新人のせいで俺が振り回されるのは御免だと、その時はミィーティングルームに高崎さんを呼んで小一時間説教した。だが、あまり効果はなかったようで……。
その後も関連事業所に関係ない書類をファックスしたり、電話の保留ボタンと転送ボタンを間違えたりといろいろと彼女はやらかしてくれたのだ。
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