難攻不落な彼に口説かれたら
「俺さあ、ここだけの話、前社長の甥でここにコネ入社したんだ。会社では猫被ってたけど、夜は遊び歩いていて、身内からすればかなりの問題児だったわけ。仕事もすぐに辞めるつもりだったんだけど、俺の指導員の先輩がスゲーいい人で、仕事だけは手を抜かずにやろうって思った。古賀室長の監視も厳しかったけど」
「小野寺さんが……問題児?」
高崎さんが少し驚いた顔をして俺を見る。
「中学くらいから真面目に勉強するのが馬鹿らしくなって、授業サボって屋上で女抱いてたり、ゲーセンで遊んだり、大人になったらキャバクラ通いしたり……、親が泣くようなこといっぱいしてきた。つい最近も問題起こして謹慎しててさあ。まあ、俺って最低な人間なわけよ。でも……俺の指導員だった先輩は俺のこと信じてくれてさあ」
俺の告白に高崎さんは引くかと思ったのだが、彼女は俺の目を見て小さく笑った。
「いい先輩に出会えて良かったですね」
「ああ、そうだな」
フッと笑みを浮かべ相槌を打つ。
「私は……大学の先輩にストーカーされて……ずっと家に引きこもってて……。でも、両親も私もそれじゃいけないって思ってここに就職しました。私もコネで入って……。でも、私……自分の身の回りのこともお手伝いさんにしてもらってたから何も出来なくて小野寺さんにいつも迷惑かけてばかりで……すみません。おまけに……まだ男の人に触れられるのは怖くて……。頑張らなきゃって思うのに空回りしてばかりで、自分が情けなくて……」
高崎さんは真面目そうな性格だし、いろいろ気負ってしまうんだろう。
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