難攻不落な彼に口説かれたら
メガネをかけて悪戯っぽく笑うと、「凄く似合いますよ」と言って高崎さんは微笑んだ。
その顔に不覚にもドキッとした俺。
何もなかった振りをしてメガネを外し、高崎さんに返すと彼女の指が俺に触れた。
〝あっ、ヤバッ!〟と思ってすぐに手を離したが、高崎さんはポッと頰を赤くした。
あれ?
なんか前と反応が違う。
触れてもビクつかない。
そのことがあってから、高崎さんの反応を注意しながら確かめた。
もう俺が近づいても怖がることはない。
だが、最近俺から視線を逸らすことが増えたような気がする。
「……男性恐怖症、悪化したかな?」
定時後のオフィスで頬杖をつきながらそう呟けば、「あれは、恋だな」と耳元で古賀さんの声がして背筋がゾクッとする。
「古賀さん、俺の耳元で喋るのやめてくれませんか?」
目を細めて古賀さんに抗議すると、彼はニヤリとした。
「ボーッとしてるお前が悪い。最近、ずっと高崎さんのこと考えてるよな?」
「そりゃあ指導員なんで、どうやったら彼女が仕事上手く出来るかとかいろいろ考えますよ。それより、『恋』ってどういう意味ですか?」
「お前、いろいろ経験あるのにわからないのか?」
古賀さんは、驚いた様子でマジマジと俺を見た。
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