難攻不落な彼に口説かれたら
「ええ。さっぱり」
「高崎さんは、お前に恋してるぞ」
「はは。まさか」
冗談かと思って笑い飛ばすが、古賀さんはさらに衝撃的なセリフを口にした。
「お前も高崎さん好きだろ?」
「はあ⁉︎」
素っ頓狂な声を上げる俺。
なぜか心臓がバクバクしてきた。
「古賀さん、俺をからかわないで下さいよ」
顔を引きつらせてそう返せば、古賀さんはフッと楽しげに笑った。
「自覚ないんだな。まあ、そのうち嫌でも気づくだろうよ」
古賀さんのその言葉が頭からずっと離れなかった。
なるだけ普通に振る舞おうとしても、変に高崎さんを意識してしまう。
俺……おかしい。
古賀さんが変なこと言ったせいだ。
高崎さんとの関係もまたぎこちなくなってしまったところで、毎年恒例のBBQ大会がうちのビルの屋上で行われた。
女子社員は浴衣を着ていて、いつもとは違う雰囲気。
古風な深紅の浴衣を着ている子がいて、誰かと思えばそれは高崎さんだった。
メガネをしていない彼女は、凛とした雰囲気が綺麗でかなり目立っていた。
周囲の男性社員も高崎さんを狙ってる奴がチラホラいる。
マズイ。
男に囲まれたら、怯えるかも。
慌てて高崎さんに近づき、彼女に声をかける。
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