難攻不落な彼に口説かれたら
「高崎さん、こっち」
「あっ、はい」
高崎さんは、俺を見つけてホッとした表情になる。
「飲み物、ビールで大丈夫?」
「はい」
「あと、これ紙皿と割り箸」
「ありがとうございます」
初めて参加する高崎さんは、物珍しそうに辺りをキョロキョロ見回している。
「知らない人がいっぱいいますね」
「俺も知らない奴が結構いるな。適当に食べていいから。焼きそばとかもあるよ」
そんな話をしていると、総務の女の子数人に声をかけられた。
「小野寺くーん、今度の週末なんだけど、ホテルのプール行かない?営業部の渡辺君や、鈴木君も来るよ」
「ごめん。先約があって」
予定はないのだが、参加するのがメンドーでニコッと笑顔を作って断る。
「えー、残念。小野寺君いないとつまんない。じゃあ、来月空いてる日ない?」
俺に前から気がありそうな女が、しつこく聞いてくる。
「ごめん。最近、週末は実家で過ごすことにしてて……。父が病気なんだ」
これも嘘。
これですんなり解放されると思っていたのだが、この女は諦めが悪かった。
「そうなんだね〜。小野寺君、何のお肉が好き?私はカルビかな?」
お前の好みなんか聞きたくない!
高崎さんはどこへ行った?
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