難攻不落な彼に口説かれたら
彼女の姿を探すと、男性社員に話しかけられていた。
高崎さんは顔を強張らせている。
「悪い。ちょっと古賀さんのとこ行ってくる」
総務の女の子達に謝ると、高崎さんの元へ小走りで向かう。
「高崎さん、古賀さんが呼んでたよ」
高崎さんの周りにいる男共をギロッと睨みつけると、彼女の浴衣の裾を掴んで救出。
「大丈夫?顔青いよ?」
屋上の出入り口のところで立ち止まり、高崎さんの顔を覗き込む。
「……ちょっと男の人に囲まれてビックリしただけです。少し休めば治りますから」
「ここ熱気がすごいから、一度居室に戻ろう」
高崎さんを連れて戻ると、コミュニティースペースのソファに彼女を座らせる。
「はい、水」
ウォーターサーバーの水を紙コップに注いで高崎さんに手渡した。
「すみません」
高崎さんは受け取った水を一気に飲み干す。
よっぽど怖かったんだな。
まあ、この容姿なら男は自然と寄ってくる。
高崎さんの浴衣姿に目を奪われる奴は結構いたはず。
今までメガネでわからなかったけど、彼女は美人だ。
ストーカーがいたのも納得。
「メガネはつけてた方がいいかもな」
ポツリとそう呟いた時、高崎さんは泣きそうな顔をして言った。
「……やっぱり私が着飾っても無駄ですよね」
あちゃー、完全に勘違いしてる。
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