難攻不落な彼に口説かれたら
「違う。むしろその逆。メガネ外すと可愛いのがバレるから、身の安全のためにもしておいた方がいいって意味だよ。その浴衣も凄くよく似合ってる」
「本当ですか?」
「俺、ブスな女に綺麗だなんて嘘は言わないよ」
高崎さんの目を見て微笑むと、彼女の髪を撫でた。
あっ、いけね!
つい可愛くて撫でてしまった。
手を引っ込めようとすると、高崎さんに手を掴まれた。
「え?」
何で?
高崎さんの突然の行動に驚き目を丸くする俺。
「わ、私、小野寺さんに触れられるのは大丈夫です。だから……今晩一緒にいてくれませんか?」
高崎さんは俺の手をギュッと握ったまま懇願する。
……この展開。
「俺の認識が間違ってなければ、俺に抱かれたいってこと?」
戸惑いながらそう確認すると、高崎さんは瞳を震わせながら返事をした。
「……はい。私……小野寺さんが好きなんです」
一瞬にして周囲の空気が張り詰め、高崎さんの緊張が俺にも伝わってきた。
「だからって、俺と寝て大丈夫なの?拒絶反応とか起きない?」
そう高崎さんに問いかけると、彼女は必死な目で懇願する。
「小野寺さんはモテるから、一晩だけでも小野寺さんといたいんです。拒絶反応の心配なんかいりません!」
一晩だけでいいのか?
ちょっと前なら大歓迎だったその言葉になぜかムッとしてしまう。
「ちょっと落ち着こうか」
高崎さんの両肩に手を置く。
彼女が言うように、俺に触れられて震えることはないようだ。
だが、身体を重ねるのは、まだ無理だろ。
「俺、一夜限りとか……そういう遊びはもうやらないから」
俺の言葉がショックだったのか、高崎さんは俯いた。
「……そうですよね。私じゃあ」
今にも泣きそうな声。
涙を必死で堪えているのだろう。
そんな彼女が愛おしく思える。
ああ、そうか。
古賀さんが言うように、俺……高崎さんが好きなんだ。
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