難攻不落な彼に口説かれたら
エレベーターが少し空いてきてようやく動けるようになり、目の前の男性から離れようとするも、彼のコートのボタンに髪の毛が絡まっていて髪が引っ張られた。

「いたっ」

思わず小さく声を上げ、髪が絡まった痛みで顔をしかめる。

嘘……。

どうして急いでいる時に限ってこうトラブルのだろう。

自分の髪の毛をボタンから外そうとするが、焦れば焦るほどうまくいかない。

「あれっ?あれれ?」

何で解けないの?

ひどく動揺していると、不意に真上から声が聞こえた。

「降りたいんだけど」

二十代後半くらいの低いイケメンボイス。

聞き覚えのある声だと頭の隅で思いながらも、今はこの絡まった髪のことしか考えられない。
< 3 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop