難攻不落な彼に口説かれたら
確かにここで彼と揉めてたら運転手さんに迷惑かけちゃう。

「……はい」

あまり気は乗らなかったが、仕方なくタクシーに乗り込む。

片岡君も一緒に乗るのかと思ったが、彼は同乗しなかった。

「お疲れ」

片岡君は私にそう言って右手を上げる。

「お疲れ様でした」

私も片岡君に挨拶を返すと、タクシー運転手に行き先を告げた。

車が発進し、後ろの窓を振り返って見ると、片岡君の姿が見えた。

まだ私を見送ってくれている。

今夜は私のことを心配してオフィスに戻ってきたのだろうか?

そう言えばさっき『相変わらず頑固だな』って言われた。
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