難攻不落な彼に口説かれたら
「いたっ」

「それはお前が男からアプローチされてもボーッとしてるからだろ」

「アプローチなんてされたことないけど……」

キョトンとしながら秀兄に言い返す。

「……この鈍感。お前に任せてたら、本当に行かず後家になるな。親父もお前のこと心配するわけだ」

秀兄はやれやれと言った様子で頭を抱えた。

彼の父親はうちの専務をしていて、私がここに就職したのも叔父さん達の勧めもあったからだ。

「あっ、そう言えば、昨日は、タクシーチケットありがと」

結婚の話題を変えようとタクシーの件を持ち出せば、秀兄は首を傾げた。

「タクシーチケット?何のことだ?」

あれっ、秀兄じゃないの?

彼の反応に逆にポカンとする私。

「あっ……何でもない。私の勘違い」

作り笑いしてその場を誤魔化す。

片岡君が気を利かせてくれたんだ。秀兄からってしておけば、私が言うことを聞くと思って。
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