難攻不落な彼に口説かれたら
片岡君のチケットだと知ってたら、タクシー絶対に乗らなかったろうな。

そんなことを考えていると、後ろから彼の声がした。

「おはようございます」

クールに挨拶すると、片岡君はコートを脱いでこちらにやってくる。

私も振り返って彼に挨拶を返した。

「おはようございます」

絡み合う視線。

ほんの数秒私に目を向けると、片岡君はすぐに古賀さんに目をやる。

「おはよう、片岡」

秀兄がにこやかに挨拶すると、片岡君は秀兄のデスクの前に立った。

「古賀さん、お願いがあるんですが」

「何だ?」

秀兄はデスクの上で腕を組む。

「うちの研究所見ておきたいんですけど」
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