難攻不落な彼に口説かれたら
髪がまたボタンに絡まらない様にまとめてきたんだけど、似合わなかったかな?

受付の女の子とか褒めてくれたんだけど。

少し落胆しながらも、研究所の長田君に連絡を取る。

長田君は私の同期で元々うちの経営企画室にいた。

黒縁メガネで目は少し細め。優しくていい人で、笑うと目がなくなる。

『はい、企画室長田です』

「本社経営企画の中村です。久しぶり。今日そっちに行きたいんだけど、案内頼めるかな?」

『了解。中村さんのためなら、何とか調整するよ』

長田君は、にこやかな声で快く引き受けてくれた。

『ありがと。申請書メールで送るからよろしくね』

電話を切ると、片岡君と時間を相談して申請書を作成する。

機密保持の観点から、研究所への出入りは本社の人間でも厳しい。

長田君がいなければ、その日に思い立って視察するなんて普通は出来ないのだ。
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