難攻不落な彼に口説かれたら
うわっ、……痴漢だ。

気持ちが悪い。やめて!

なのに声を出そうにも怖くて声が出ないし、身体が固まって動くことも出来ない。

片岡君、助けて!

ドア付近にいる片岡君に目で〝助けて〟って何度も訴えていると、不意に顔を上げた彼と目が合った。

「馬鹿!こっち!」

片岡君は怖い顔で私の腕を掴んで自分の胸に引き寄せる。

彼の力が強くてドンと彼の胸にぶつかってしまったけど、お陰で痴漢から逃げることが出来たのだから文句は言えない。

そのタイミングで次の停車駅について反対側のドアが開く。

片岡君の胸に手を当てホッとしていると、彼の舌打ちが聞こえた。

「……チッ、逃げた」
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