難攻不落な彼に口説かれたら
中村さんに関心はあったが、恋人にしたいとか、そういう気持ちは当時はなかった。

中三の時に父親が交通事故で亡くなってから、女でひとつで俺を育ててくれた母親が病で倒れ、恋愛どころじゃなかったからだ。

母方の叔父である『フォーチュン』の社長……野辺修が、入院費を面倒見てくれたが、母は闘病の末、俺が高三の冬に他界。

高校を卒業してから、俺は叔父の勧めもあってアメリカに留学した。

アメリカの大学を卒業してMBA取得後は、『フォーチュン』のアメリカ支社に入社。

叔父には恩があって、彼を助けたかった。

もう少しアメリカで経験を積みたかったが、叔父に呼ばれて急遽本社に赴任。

『フォーチュン』のアメリカ支社から本社に赴任する時、事前に経営企画室の名簿の中に〝中村雪乃〟の名前を見つけてまさかとは思ったが、ここで再会するとは思わなかった。

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