難攻不落な彼に口説かれたら
叔父は落ち着いた様子で話すが、彼の告白は衝撃的だった。

『……今はどういう症状が出ているんですか?』

自分の親代わりということもあり、将来の社長の椅子よりも、彼の病状の方が気になる。

『最近はよく転んだり、手がしびれたりするかな。うまく病気と付き合っていくしかないんだが』

叔父は、手をじっと見つめながら苦笑した。

『そうですか。俺もいい医者を探しますから、気を落とさないでください。自分の手足と思って俺を使っていいですよ』

俺がそう言うと、叔父は嬉しそうに笑った。

俺の両親の分も叔父には元気で長生きして欲しい。

『仁は頼もしいなあ。あれももう少し素行が良くなるといいのだが……。会社では普通にしてるが、夜はキャバクラ通いをしてるらしい。困ったものだ』

あれというのは、同じ経営企画室にいる俺の従弟のことだ。
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