難攻不落な彼に口説かれたら
それと、彼女の他にももうひとり、視線を感じた。

チクチク刺さるようなその視線に目をやれば、予想通り俺の従兄弟で、俺を睨みつけていた。

どうやら俺がここにいるのが気に食わないらしい。

俺は相手にしなかったが、奴が中村さんと一緒にいるのが気になった。

経営企画室の面子との挨拶が終わると、古賀さんが中村さんと親しげに話している。

古賀さんは結婚指輪をしているが、中村さんの指には指輪はない。

中村さんが古賀さんのアシスタントだから仲良く見えるのだろうか?

そんなふたりを見ていると、なぜか胸がモヤっとした。

『片岡さん、ちょっといいですか?』

他人行儀なその呼び方に違和感を感じずにはいられない。

『何?』

緊張した面持ちの中村さんをじっと見つめた。

『エレベーターではすみませんでし……コホッ』
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