難攻不落な彼に口説かれたら

「どうしたんですか、雪乃先輩？そんなに慌てて」

私の三つ下の後輩の小野寺君が、コーヒー片手にゆっくりと私の右隣りの席に着く。

小野寺拓海君は、身長は百七十五センチ。髪は明るい茶髪のくせっ毛で、目はまん丸。トイプードルに似ていて、性格もワンコ系で可愛い。

私が指導員をしていたせいか、私を『雪乃先輩』と呼んで慕ってくれる。

「電車が遅れちゃって。もっと早く来ようと思ったんだけど……コホッ」

パソコンを立ち上げながら小野寺君に説明するが、やっぱりまだ咳が出る。

そんな私を見て心配そうに小野寺君が言う。

「先週までインフルエンザで休んでたんですから無理しないで下さい。顔色悪いですよ」

「大丈夫。それに、家にいても落ち着かないよ」

私はニコッと笑顔を作った。

パソコンが立ち上がって、メールボックスを開けば、メールの数は五百通を超えている。

それを見て軽く目眩がした。