難攻不落な彼に口説かれたら
三十三歳で会社の中枢の経営企画部の室長なのだから、父親が専務とはいえ、かなりやり手なのだろう。

一見穏やかで優しく見えるが、それは計算してやっているに違いない。

その日の夜、社長と古賀さんの三人で会食をしていると、社長がトイレに立った時に古賀さんが唐突に中村さんのことを切り出した。

『うちの雪乃と知り合いか?』

……俺と中村さんとのやり取りで何か感じるものがあったのだろうか?

『うちの?』

古賀さんの言葉に引っかかりを覚えて眉根を寄せると、彼は『あっ、すまん』と言って謝った。

『中村雪乃は、俺の従妹なんだ』

ああ、だからあんなに親しげに話していたのか。

そのことになぜかホッとした。

『中村さんのことは良く知ってますよ。昔、よくお説教されましたからね』
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