難攻不落な彼に口説かれたら
『経営会議の資料ねえ。雪乃に任せてるが、どこまで纏めているか……。まだ雪乃がいたらよろしく頼む』

古賀さんは俺の考えなんてお見通しのようで、俺を見てニヤリと笑う。

店を出る時、社長が気をきかせてくれたのか、鯛飯を土産として受け取った。

会社に戻ると、案の定、中村さんがパソコンと睨めっこしている。

もう九時過ぎなのにいつまで残業するつもりだ?

咳も酷くなったような気がする。

この馬鹿!

昔と同じやり方で中村さんの仕事を奪うと、彼女に食事をさせ、俺が代わりに彼女の仕事を終わらせる。

その後すぐに中村さんを連れて退社すると、俺と別れて駅に向かおうとする彼女を呼び止めた。

『ちょっと待って』

『片岡君?』

中村さんは、びっくりした様子で俺を振り返る。
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