難攻不落な彼に口説かれたら
『そんな青い顔してるのに電車で帰らないでくれる?』

少し強い口調で言ってタクシーを捕まえると、運転手にタクシーチケットを渡した。

『乗って。古賀さんにタクシーチケットもらったんだ』

中村さんを乗せる前にチケットを運転手に渡したのは、彼女に有無を言わせないため。

古賀さんにもらったと嘘をついたのも同じ理由だ。

だが、中村さんは頭を振る。

『でも、終電なくしたわけでもないし、ちゃんと帰れます』

『相変わらず頑固だな。咳もひどくなったんじゃない?明日具合悪くなって休まれても迷惑なんだけど』

中村さんが俺に従うようにわざと意地悪く言った。

だが、それでも断ろうとする彼女に苛だたしげに告げた。

『タクシーチケット使うのがもったいないって思うなら、仕事で返したら?俺だって歓迎会の件で折れたんだ。それに、運転手さんだって待ってるんだけど』
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