難攻不落な彼に口説かれたら
「うわー、メール溜まってますね」

小野寺君が私のディスプレイを覗き込み、驚きの声を上げる。

「全部削除したくなるよね」

メールを見ながら私は苦笑した。

「そう言えば、今日うちに新しい人来るらしいですよ」

「え?そうなの?」

その情報は初耳で、思わず小野寺君の顔をガン見する。

「雪乃先輩、先週ずっといませんでしたからね。上の都合で急に決まったらしいです。アメリカでMBA取得後にうちのアメリカ支社に入ったエリートで、二十八歳の男性社員。まだ独身で将来の社長候補らしいですよ」

秘書室のお姉様方にでも教えてもらったのか、小野寺君は新しく来る社長候補の情報をやけに詳しく私に説明する。

「ふーん、そうなんだ」

私はメールにさっと目を通しながら相槌を打った。
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