難攻不落な彼に口説かれたら
だが、自分の視界に中村さんがいると気になって仕方がない。

俺には関係ない……そう割り切れないのだ。

「俺らしくない」

自嘲するように呟いて、再び自分のスマホをいじるが全然集中出来ない。

スマホを操作するのはやめてポケットにしまうと、中村さんの寝顔を見つめた。

俺の膝で安心したように眠る彼女を見ていると、やっぱり俺が守ってやらなければと思えてくる。

中村さんの頭に手を置き寝顔をじっと見守った。

三十分くらいそうしていただろうか?

電車が終点に着いて、中村さんに声をかけながら肩を揺する。

「中村さん、池袋に着いたよ」

中村さんは、俺の声に反応して「ん?」と声を出す。

彼女の顔を覗き込むと、目が覚めたのかバチっと目が合った。
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