難攻不落な彼に口説かれたら
「着いたよ」

もう一度中村さんにそう告げると、彼女は慌てて上体を起こす。

「きゃあ~、片岡君、ごめん!寝るつもりなかったのに~!」

中村さんは俺の膝で寝ていたのが恥ずかしかったのか、顔が真っ赤になってパニック状態。

そんな彼女を面白そうに眺めて言った。

「ほら、早く降りないとまた坂戸に戻っちゃうよ」

「うん、そうだね!」

ひとりで逃げるように先に降りる中村さんの腕をすかさず掴む。

「そんな慌てなくても大丈夫。転ぶよ。あと、スマホ忘れずに」

そう言って中村さんが落としたスマホを差し出した。

「あっ、ごめん。ありがと」

中村さんはスマホを受け取とうとするが、パンプスのヒールが溝に引っかかってよろけた。

「危ない!」

慌てて中村さんの腕を引いて支える。

「ほら、気をつけて」
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