難攻不落な彼に口説かれたら
「『ふーん』って関心ないんですか?」

「社長夫人になりたいとは思わないもん。そっちよりも、相手の名前聞いて早く名刺発注しなくちゃって思うな。目の前の仕事の方が大事」

こんなにメール溜まってるのに、社長候補とどうこうしたいなんて妄想に浸る余裕なんかないのだ。

「さすが、僕の雪乃先輩。僕が出世したら、是非僕のところにお嫁に来て下さい」

小野寺君がニッコリ微笑む。

だが、これはプロポーズではない。朝の挨拶のようなもので、私も軽くあしらっている。

「それは楽しみだね」

「ちぇっ、少しは本気にして下さいよ」

小野寺君が可愛く拗ねてみせる。

彼は母性本能をくすぐるタイプで、女子社員にも結構人気。

「本気にして困るのは、小野寺君だよ」
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