難攻不落な彼に口説かれたら
「ダメだよ。そんな醜態ここで晒したら、明日から恥ずかしくて出勤出来ない」

「そんな事態になったら僕がちゃんと責任取り……!」

「お~い、中村さ~ん」

小野寺君の言葉を遮り、大声で秀兄が私を呼んだ。

「は~い!」

スッと席を立って、秀兄の元へ御用聞きに伺う。

「何ですか?」

「熱燗ふたつ頼むわ」

「了解です」

店の人に頼みに行くが、忘年会シーズンからか、店員さんは大忙し。

「私、持っていきますよ」

店員の代わりに私がお座敷きまで熱燗を運ぶと、みんな盛り上がっていた。

秀兄のテーブルの前に熱燗とおちょこを置く。

「お待たせしました」

「ああ、悪い。お前もそこに座れよ」

秀兄は顎で片岡君の前の席を示す。
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