難攻不落な彼に口説かれたら
……片岡君の前ってなんか気まずいなあ。

「でも……私幹事だから」

幹事を理由に断るが、片岡君が口を挟んだ。

「もう料理もで揃ってるし、座って食べたら?身内が立ってると落ち着かない」

「片岡、良い事言うな。雪乃、主役の言うことは素直に聞くものだぞ」

秀兄はお酒が入ったせいか、私を下の名前で呼んで悪ノリする。

「わかりました」

観念して片岡君の前に座り、彼にお酒を注ごうとしたら、逆におちょこを秀兄に渡された。

「片岡、雪乃に注いでやって」

秀兄の言葉を受けて片岡君は、とっくりを手に持ち〝お酒大丈夫なのか?〟と問いかけるように私を見る。

一杯だけなら大丈夫かな。

「お願いします」

片岡君に向かっておちょこを差し出すと、じっと彼の綺麗な手を眺める。
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