難攻不落な彼に口説かれたら
肩をヒックヒックさせて泣いていると、目の前にハンカチが差し出され、私は何も考えずにそれを掴んで涙を拭う。

「少しは落ち着いた?」

ポンポンと私の頭を撫でながら、片岡君が私の顔を覗き込んできた。

今までに見たこともないような甘い顔で微笑んでいるので、つい自分の彼への想いを口にしてしまう。

「えへへ、大好き」

それから何を話したのか……。

睡魔が襲ってきて夢なのか、現実なのかわからなくなった。

覚えているのは優しくて甘いキスと……自分を守るように包み込む肌の温もり。

でも、夢かと思っていた……。

いや……正確には違う。

あまりにも幸せすぎて現実とは思えなかったんだ。

< 93 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop