「先生、愛してる」
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今日も普通に過ごして、いつも通りの生活を送るのだろうと思っていた。いや寧ろ、そうであってほしいと思うほどに。しかし私の人生に、思いも寄らぬ出来事が舞い降りてきたのだ。
「柏木さん、好きです」
私は文字通り固まってしまった。何かの間違いではないかと思うほどに、驚きを隠せなかった。
放課後、いつものように図書室へ向かおうとすると、その扉の前で急に男子生徒に呼び止められた。すぐに済むだろうとその場で話に応じたのが間違いで、まさかこんな事態になるとは予想もしていなかった。
茶色がかった短髪、少し焼けた肌にすらりとした体格。秋奈の記憶にはない男子生徒が、目の前で顔を赤くして佇んでいた。
────私はこの人に何かしただろうか。
考えてみても、頭にはなにも浮かばない。
申し訳ないけれど、女子高生らしく恋愛などする気分ではないというのが正直な気持ちだった。なんと返すべきか、告白を受けたことがなかった私はしばらく考え込んでいた。
「あ、えっと…?」
そのとき、彼のほうから問いかけが来た。返事はまだか、と言いたいのだろう。
仕方なく、私は戸惑いながらも口を開く。
「ごめんなさい。返事の仕方に困ってしまって。実は私、あなたのことを知らないの」
申し訳なくて、その時の彼の表情は流石に直視することが出来なかった。悲しそうな気まずい顔が、見なくても頭に浮かび、私の中に罪悪感という気持ちが膨張してきていた。
「お、俺、去年同じクラスだった岸田拓(きしだ たくみ)っていうんだけど。まさか覚えてもらってなかったとは知らなくて。ごめん」
目の前の彼が言った。岸田というその生徒は、どうやら一年の時私と同じクラスだったらしい。