「先生、愛してる」
そっと胸を撫でおろす。
近頃の男性は、みんな岸田のようなのだろうかと少し怖くなった。先生といる時の感覚とは違い、身震いすら覚える。
早く先生に会いたい。先生に会って、このざわついた感情を取り払ってしまいたい。
そんなことばかりが、頭の中で巡っていた。
学校に到着すると、教室の隅にある自席に着席した。鞄から一限目に必要な教科書類を取り出して、ほっと一息をつく。
しばらくすると、担任の教師がホームルームを行いに教室へ入ってきた。必要事項だけを伝えると、すぐに去っていく。いつもとそう変わりないただの景色だった。
その後、いくつか授業を受けた。
普段なら真面目にノートを取ったり、先生の話に相づちを打つが、今日は少し調子が悪い。
岸田の姿が頭の隅でちらついて、なかなか集中できなかった。いつまで彼に付き纏われる羽目になるのだろうと、思い返しては頭が痛くなる思いだ。珍しく授業に身が入らない私に対して、教卓前の教師が時折不思議そうな顔でこちらを凝視する。それすらも腹が立つ一方で、さっさと放課後が来てしまえばいいのにと無理な願いを心中ずっと唱えていた。
しばらくして放課後が来ると、私はすぐに図書室へ駆け込んだ。朝からずっと待ち焦がれていた時間の訪れが嬉しくて、まるで子どものように無邪気な心で、その引き戸に手をかけた。
先生の迎えに対して、私は軽くお辞儀を返す。彼の顔を見るだけで、 今日のどんよりとした気分が一気に晴れていく。鮮やかに色付けられた思いを抱えて、そのまま読書スペースの椅子に腰掛けた。