例えば君に恋しても
叶わない
もうそろそろかな・・・?
住宅街に一件、一際だって明かりを照らすファミレスの前で腕時計を確認すると
少し向こうに目立ちすぎる高級車が見えて苦笑い。
「もう少し目立たない登場の仕方はできないのかな?」
呆れながら
私の前に停まった車から出てくるはずの新一さんを笑顔で出迎える。
「待たせた?」
そう言って高級車から出てきたのは
新一さんではなく
弟の仁。
異様な笑顔を浮かべる仁に一瞬で背中が凍りついた。
「誰だと思ってた?」
首を横に振り、後退りするも、背中に冷たく当たったのはファミレスの冷たい壁。
「美織だっけ?頼まなくても随分良い仕事してくれてるじゃん?」
歪ませて笑ったその口端がほんのり、痣をまだ残してる。
あの夜
相当な勢いで新一さんが仁を殴り付けたことを思い出した。
まさか
殴られた仕返しに来たというのか
言葉も出ないまま
口を塞がれ
抵抗も虚しく、車内に引ずりこまれる。
あの夜、仁から受けた暴力が脳裏をよぎり、恐くて叫び声をあげることもできずに
私はこの悪魔にもう一度あの屋敷へと連れ戻された。