例えば君に恋しても
使用人が既にいなくなった広い屋敷に二人

仁の寝室へと放り込まれた私は、じりじり詰め寄る彼との距離をできるだけ保とうと周りを警戒しながら後ずさる。


「兄貴とは何でもないなんて言ってなかったっけ?」

「別になんでもないわよ・・・」

「女って平気な顔で嘘をつくのな。」

彼は警戒する私を尻目にチェストからA4版サイズほどの封筒を取り出すと中身を床にばら蒔いた。

数えきれないほどの写真の数々が飛び散るように床にはらはら落ちていく。


そこに写っていたのは、ここ最近の私や新一さんの写真だった。



「こんな写真・・・一体・・・」

いつ撮られていたかも分からない。

よく見れば私の住むアパートの人達のものまである。

何を考えてるのか分からない不適な笑みに鳥肌がたつ。


「美織、君には感謝しきれないほど感謝してるよ」


「どういう意味よ・・・」

「この写真があれば、わざわざ俺があの兄貴と対等に張り合わなくても、自然とあいつは親父の跡を継ぐことができなくなるからね」

なぜだかその言葉と、昼間の新一さんの秘書の険しい表情が重なって浮かんだ。


「・・・別に私は彼と恋人関係でもなんでもないわよ?」


「それはどうだろう?」

仁が手に取ったのは昨晩、雰囲気に流されてしまいそうになって新一さんとキスをしてしまいそうになった時のものだ。



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