例えば君に恋しても

「あなた・・・瑛士さんを知ってるの？」


どこまで信用できて、どこまで信用できないのか分からない仁を睨み付けても彼は臆することもない。


「知ってるも何もあいつは俺の悪友だよ。まあ、最も朝倉瑛士なんて名前ではないあいつとね。

会いたいなら会わせてやるよ？


どうせ君もあいつの暇潰しの人形だったんだろうけど？」



仁の言葉が頭の中をぐるぐる回る。

瑛士さんが仁の悪友？

その言葉、一つ一つが信じられなくて

信じたくなくて

揺さぶられそうな心

胸に手を置いて、なんとか落ち着こうと目論むも

仁はおもむろに携帯をだし、誰かに電話をかけた。


そして、携帯をスピーカーモードに切り換えわざと私に画面を向ける。

携帯に表示されたのは〃三枝童里〃という、全く知らない男の名前。


何度目かの呼びだし音の後回

スピーカーから漏れた声に、呼吸が止まった。


『仁？どうしたんだよ、お前から電話なんて珍しいこともあるんだな。

なんか楽しいことでもあった？』


その声は

ずっとずっと、私が待ち続けてた

あの人の声・・・


勝ち誇ったような顔で私を見る仁。

なぜ

彼が私にこんなことをするのかも理解できない。