例えば君に恋しても



「ね?俺の言った通りでしょ?」


「こんなことしたくて・・・私をわざわざここへ連れてきたの・・・っ?」

泣き声なのか最早区別がつかないくらい震える声。


仁は「それもある。」そう答えた後で、自分の手を濡らした私の涙を舐めた。


「壊れた玩具でもまだ使えるね。

君は傷付いた分だけ兄貴に癒して貰えばいい。

それだけで、俺の後継者への道は勝手に作られてくからさ。

でもね、一つだけ府に落ちないことがあるんだ」



眉を寄せてこの人は一体、何を、誰を嘲笑ってるかのように

それでも


苦しそうに笑う。



「美織はどうしてこんなに傷ついてもまた、恋をするの?

恋ってそんなに素敵なものか?」


不思議そうに聞いた仁に、私はぐちゃぐちゃに潰れそうな胸をかきむしった。


「本気で好きになれば分かるよ・・・」

「兄貴のこと、本気で好きなわけ?あの人きっと、この写真が表沙汰になった時点で君を軽く捨てるよ?」


・・・そんなこと

分かってる。

でも、おあいにく様なことに私たちはまだそんな関係じゃない。



新一さんはきっと

私の理想の人で

まるで、夢のような存在。


あの人を嫌いになる理由なんか探してもきっと見つけられない。

けど

好きになったらいけない理由ならきっと・・・たくさんあるね。

認めてしまえば

新一さんの将来は仁に潰されちゃうね。

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