例えば君に恋しても


「仁、あなたは何も分かってないね。

私が本気で愛したのは後にも先にも瑛士さんただ一人。

でも、もう冷めた。

仁のお陰。感謝する。」


涙を堪えて歯を食いしばって

仁の顔を真っ直ぐに見てやった。


彼はきょとんと、不思議そうな顔をして「兄貴は?」と戸惑いながら私に聞く。

最初あったときにも感じたけれど、仁は本当に大人のフリをした子供だ。


「あなたのお兄さん?好きだって言うから、金持ちの坊ちゃん味見してみるのもいいかな?って思ったけど、つまんないからやっぱ、止めた。」


それでも、私を利用して新一さんを潰せる?


暫く考え込んだ様子で口元に手を置いてた仁は、一人で頷いた。


「兄貴を守ろうとしてる?」

守るとか守らないとかバカでしょ。

だって

新一さんなんて、最初から叶わない相手だと知ってた。

結局は私を傷付けるだけのあの人を・・・


傷つけられるだけだけどあの人を・・・

守りたい。

たった100円ぽっちの貸しで

私なんかを救おうなんてしてくれた

あのお人好しで、ずる賢くて、嫌みで

優しすぎるあの人を

私は守りたい。

そう。

好きだから。


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