例えば君に恋しても
好きだと気付いた瞬間に、失恋しなきゃいけないことを理解してるなんて
報われない恋だよね。
でも、本当は報われないと理解してるからこそ気付きたくなかったし、認めたくなかった。
でも、もうダメだ。
私なんかに幸せをあげると言ってくれた優しいあの人に・・・
私なんかに夢を見させようとしてくれた優しいあの人に・・・
私からできるせめてもの愛情表現だと思ってほしい。
届かなくていいから
伝わらなくていいから・・・
知られないほうがよっぽどマシだから・・・
にっこり笑って見せると仁は、鼻で、クスっと笑う。
「本当君は俺の興味をくすぐるよね。
弱いくせに。
蟻地獄の中でもがく蟻と同じなくせに、いちいち癪に障る。」
「どれだけ私を傷つけようとしても無理だよ?
傷付いたとしても、もうこれ以上落ちるところがない所まで私の人生、落ちてるからね」
「・・・それじゃあつまらないよ。
結局、兄貴が優位に立ってることに変わりはないし。
なんでもかんでも昔から、欲しいものは兄貴と弟の二人が持っていっちまうんだからな・・・」
チッとしたうちをした彼は力なく微笑しながら、肩を落した。