例えば君に恋しても
「なあ、君はどうやって兄貴に取り入ったわけ?
あの人以外に兄貴が関心を示した女は俺の知る限り君くらいだ。
なんか裏技でもあるの?」
あの人って・・・新一さんの婚約者を指しているのだろうか。
「別に取り入ってなんかないわよ。
好きになってくれなんて頼んだ覚えもないのに最初から関わってきてたんだもの。」
そう。
それは私だって不思議でたまらない。
なんの取り柄もない、私なんかを彼が好きだと言ってくれた理由なんか。
「君はあの人に似ても似つかないんだけどな・・・ブスだし。」
サラッと傷つくことを容赦なく言ってくれる。
思ったことをそうやって直ぐに口にするところが魅力がないところを更に引き立ててることを仁は、理解していないんだろう・・・。
「あなた、一体、何が言いたいわけ?」
「別に何も?」
こんな奴にも婚約者がいるのかと思うと相手が哀れで仕方無い。
「あなたってきっと、結婚しても幸せになれないタイプよね?」
皮肉たっぷりに嫌みを言ってやると、仁は、可笑しそうに肩をすくませた。
「なにいってるの?俺たち兄弟につき、婚約者はただ一人。
あの人は市橋に並ぶところのご令嬢だ。
しかも一人娘とあって、市橋の跡取りと婚約することを約束されてるからね。
だから、あの人に嫌われてしまったら、跡取り候補としても致命的になる。」
「つまりは、跡を継ぐ条件としてはその人に気に入られてる事も大事ってことなのね?
それなら、あなたが新一さんをひきずり落としたとしても、絶対にあなたは優位にはならないじゃない。」
くすくす笑う私を仁は、睨み付ける。