例えば君に恋しても
「それをどうするつもり・・・?」
「なに?急に顔色悪くしてさ。君が本当に兄貴に対してなんの感情もないなら、君には関係のないことだよ。
俺はこれからこの写真を添付したメールを市橋グループの全ての会社を含め、親、弟、そしてあの人に拡散するだけ。
君や兄貴がいくら言い訳をしたところで君達二人に何もなかった証拠なんてないんだよ。
逆を言えばこの写真を見た人間がどう捉えるか。なんだよ。
そう、婚約者を裏切り下働きの女に手をだした跡取り息子にみんなが勝手に、無能の烙印を押すんだ。
すると兄貴はあの人にも見捨てられて、跡取り候補の資格を無くすどころか、今現在の立場も失うだろうね。
勿論、君も直ぐにクビだよ。」
「やめなさいよ・・・っ」
「なんで?
君には関係ないだろ?例え君がクビになったとしても働くところなんて世の中にはたくさんあるよ。そんなちっぽけな心配?
それとも他の心配?」
不適な笑みを浮かべる仁はきっと私が新一さんを好きだと言おうと嫌いだと言おうと最初からこうするつもりでいたに違いない。
何も言えず唇を噛み締めるしかない無能な私に仁は続けた。
「やめて欲しい?」
試すように聞く仁に、頭の悪い私は上手に彼を言いくるめる術ももたない。
ただ、静かに頷いた。