例えば君に恋しても
「・・・そんなに兄貴が好き?」
つまらなさそうな声が近づいてきて
視界に彼の足もとが写った。
「・・・お願いします。止めて下さい」
「・・・兄貴の何がそんなに良いわけ?」
「・・・お願いします。止めて下さい」
「答えなよ。」
答える義理などない。
頭の中は悔しさで一杯だった。
「・・・まあ、いいか。
止めないよ。だって俺はね一兎も二兎も三兎も獲る男なんだ。」
愉快そうな彼の声が頭上間近に聞こえて虫ずが走る。
「でもそうだな。
君を利用しない手はないね。
君、俺の恋人になりなよ。」
流石に
顔をあげて睨み付けた。
「絶対に嫌。なんのために?何をしたくて?」
「口の聞き方に気を付けなよ。場合によっては今すぐに送信しちゃうよ?」
脅しだ。
タブレットの画面を見せつけて勝ち誇った笑みを浮かべるこいつの顔を見てるくらいなら床に頭を擦り付けてるほうが何倍もマシだ。
黙ってまた、頭を下げると
仁は続けた。
「兄貴が獲られなかったものを俺が獲る。
それが快感。」
「あなた新一さんに何が恨みでもあるわけ?」
床を睨み付けながら聞いた私に仁は暫く何も答えなかった。