例えば君に恋しても


どれくらいそうしていただろう・・・

最早、床に頭を擦り付けてる感覚さえも無い。

「・・・産まれた順番が違うだけで、兄貴は昔からなんでも与えられた。物も地位も愛も。

産まれた順番が違うだけで、望むことさえ叶わないんだぞ俺は・・・

おかしいだろ?

おかしいよな?

同じ親の血が流れてるのにだっ・・・

そのくせ、頭の悪いバカ供は偏見ばかりを並べてて・・・

この世の中産まれた順番だけが全てとも知らない無知な野郎共がよ

これまた産まれた順番だけで兄貴ばかりちやほやするんだ。


世の中平等なんて言ってる奴もくそ食らえだけどな。

好きなように生きて、与えるだけ与えられて、何も言わなくてもちやほやされてる世間知らずが、偽善者ぶって、俺を哀れんでくるんだ。そんな人間が世界で一番嫌いなんだよっっ!!」


泣いてるのか怒ってるのか、私には分からなかった。

分からないけれど


仁が新一さんを嫌う理由がなんとなく

分かるような気がした。


妬きもちなんだ。

自分に無いものを持ってる新一さんが羨ましくてたまらないんだ・・・


だからいつまでも駄々っ子のように、バカなことばかりしてる。

どうしようもないやつだと心底思う。

けど

なんとなく

そんな感情も分かる気がした。

敵わない相手に叶わぬ思い。

叶わぬ思いと敵わぬ相手。

それはまるで永遠の片想い。



私と仁の唯一の共通点。

それでも

分かるよなんて言えない。

言ってはいけない気がした・・・。








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