例えば君に恋しても
好きな人の悲しい顔なんか想像したくもない。
でも
後悔もない。
「ねえ、美織、アイス食べに行こ?」
隣で清々しい笑顔を見せる仁に、笑い返すこともできない。
「私、まだ仕事終わってないから・・・一度事務所に戻る。」
「ああ、それなら大丈夫。clean・whiteの社長にはもう言ってあるから。
俺の名前聞いただけで、好きなように連れ回していいって言ってくれたんだ。」
・・・どこまで勝手なんだか。
私の腕を掴んだままのその手を払う。
そんなことされても動じないのは彼が私を好きではない証拠。
恋人なんて聞いて呆れる。
ただ単に新一さんにあんな顔をさせたいがために私を脅した。
「仁にとって、恋人ってなに?」
「わかんない。」
「今まで誰かと付き合った事あるの?」
「当たり前じゃん。バカにしてる?」
「バカにはしてない。」
「それならいいや。今、車呼ぶね」
「嫌っ。私は乗らない。」
「なんで?」
あんた達の乗る車が私の肌に合わないからだよ。
無視をして歩き続ける私を追いかける。
「なら、いいよ。たまに歩くのも悪くない。」
本当に何を考えてるのか分からない男だ。
喜怒哀楽のスイッチもきっと、普通の人と違うところに付いてるに違いない。