例えば君に恋しても
「美織は俺の物だよね?」
「肩書きだけはね。」
その辺にあったスイーツ店で買った、私はジェラート。仁はシンプルなバニラアイスを舐めながら歩く。
何をしたいのか
どうしたいのか
どこに向かって歩いているのかも分からないで、ただ、真っ直ぐに道なりに歩く。
「仁はどこまで新一さんに嫌がらせをしたいわけ?」
「さあ?嫌がらせとさこどもっぽいことしないし。」
ついさっき、思いきりそれをやってのけた帳本人がシラッと言う。
「あんただって私なんかと付き合ってるのがバレたら、跡取り問題に響くんじゃないの?」
「それは大丈夫?」
「どうして?」
「兄貴が美織の立場を悪くするようなことはしないだろうから。」
どこまで最低なんだろう。
そうやって自分中心に世界を回そうとして
いつか痛い目をみればいい。
こんな奴はもう、自分の足で立ち上がれなくなるほど挫かれればいい。
トップに立つ人間としても
普通に生きてるだけだとしても
なんの資格もない。
私は冷ややかな視線を仁に向けると
小さな溜め息をついた。
あの人をキズツケテモ守りたいと覚悟を決めたとたん
世界が色を無くしてしまったように何も意味を持たないものとなった。