例えば君に恋しても
それでも前を向いて
一人で生きていこうと決めたはずの未来さえボヤけてしまったように
今までの出来事もこれから起こるであろう出来事も
まるで蜃気楼のように不確かになってしまたようだ。
新一さんは決して私の全てなんかじゃない。
そこまで好きなのかも曖昧なのに
もう
彼が私を好きじゃなくなると思うだけで切ない。
「張り裂けそうだ・・・」
溶けだしたジェラートがコーンから溢れて
滴り落ちる様は
未来を失って崩れ落ちていく私に重なる。
「美味しくないの?」
既にアイスを食べ終えた仁が私の手の中のジェラートを見つめながら聞いた。
「ねえ・・・美織と俺は似てるよね?」
「・・・どこらへんが?」
視線も向けない私の手からどろどろになったジェラートを取り上げると、辺りを見回す。
「あそこに座ろう?」
カフェの前に並ぶベンチを指差し、ゴミ箱にジェラートを捨てる。
先にベンチに腰を下ろした仁の後に続いて、行き交う人の波をぼんやりと見つめた。
「いつも何かに失望してるところが。
初めて会った時もそう。美織は何一つ持たない裸同然の様な生き方をしてた。
ただ
兄貴にすがりついて、虫の息で生きてるようなちっぽけな存在。」
仁に私がそんな風に映っていたならそうなのかもしれない。
それでも私は
瑛士さんを忘れて生きようと必死になり初めていた。